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一人でも多くの患者さまを助けたい


眼科医  赤星 隆幸 さん


  白内障の手術は大きく進化を遂げ、フェイコ・プレチョップ法ではたった5分で、創口(きずぐち)もわずか1・8ミリと1滴の血を出すこともなく行われています。その術式の開発者でもあり、ご自身で年間約1万の目を手術し、「神の手」を持つと言われる眼科医赤星隆幸先生。2009年に故多根裕詞(株)三城ホールディングス前会長の両目手術を赤星先生が執刀し、遠近両用の2焦点レンズを移植されたご縁で、赤星先生と当誌編集長多根幹雄の対談が実現しました。



メガネ屋の社長が「脱メガネ」に

赤星 日本橋白内障クリニック(以下、日本橋クリニック)を開院して、5年になります。

多根 父の故多根裕詞が手術をしていただいたのが2009年なので、開業の4年前ですね。父は、もともと頭の回転が速くて、気が利いて闊達な人でしたが、あの前後は、ちょっとボケたかな?と思う時がありました。

赤星 視力が0.3~0.4ぐらいでしたね。

多根 こちらが質問しても、とんちんかんな答えが返ってきたりしていましたが、お陰さまで、手術していただいてから、見違えるようになりました。原因が脳じゃなくて、眼だとわかりました。あれ以来、週末に古本屋に行くのが習慣になり、週明けには事務所にダンボールが2箱ぐらい届いて、それをバーッと読むんです。父の眼に入れていただいたのが、遠近両用の2焦点レンズだったので近くを見ることには不自由がなかったようでしたね。

赤星 あのときは、どのレンズをお勧めするか随分迷ったんですよ。眼内レンズの多焦点は、メガネがいらなくなるので。パリミキの社長さんがそんなものを入れたら、他のメガネ屋さんから袋叩きに遭うのではと思いました。

多根 どちらかというと、みんなに反対されると、やりたくなる人でしたから。あえてチャレンジしたかったのでしょう。

赤星 ただ、2焦点レンズの欠点は、中間距離(50㎝から1m)です。いろいろな工夫はされましたが、結局全部ダメでした。そこで、3焦点が出てきて距離の問題はほぼ解決されましたが、まだ素材の問題や創口からの入れやすさに課題があります。2㎜以下の創口にしないと、手術によって乱視が起こります。単焦点では、2004年に私が世界に先駆けて1.8㎜の創口での手術を確立しましたが、3焦点レンズも可能な限り小さい切開からの移植が必要です。今回も、メーカーから専用の器具を作ってもらえないかと相談がありました。メガネ屋さんにとっては、酷な話かもしれませんが、私がやろうとしていることは、「いかにメガネがいらなくなるか」ということかもしれません。


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術後にメガネを楽しむ時代

赤星 ただ、私はメガネ好きですし、決してメガネをゼロにしようという気は全然ありません。しかし、今はひどいメガネが世の中に多すぎますよ。私は、とにかく一番トップの最高のものでないと気がすまない性格なので、心を込めて良い手術をしたからには、その後のメガネは、患者さんにとって最高のメガネを使ってもらいたい。どこかわからないメガネ屋さんが病院に入ってきて、値段が高い割には良くないというのが、私は嫌で仕方がなかった。今は、日本橋クリニックの隣にはパリミキがありますし、技術もしっかりしている。

多根 私たちも赤星先生のレベルに近づけるように頑張らないといけませんね。手術後、眼が見えるようになると、おしゃれもしたくなるでしょうし、旅行にも行きたくなるでしょう。そうすれば、見ることだけじゃなくて、ファッションにも気を使われるようになる。昔の白内障手術は、眼の中にレンズを入れることができず、術後は虫メガネのようなレンズのメガネをかける必要があったので、女性はおしゃれをする気にもなれなかったと思います。しかし今は、白内障手術が進化して、メガネがいらなくなった。むしろ、術後に楽しんでいただくメガネの可能性に期待しています。


早く手術しないと損

赤星 65歳を過ぎると、白内障適齢期で、誰でも多かれ少なかれ、白内障が出てきます。そうなるとメガネでは矯正できなくなり「見えないから危ない、人も多いので怖い」となって、外に出たがらない。家の中で本を読もうと思っても疲れる。お父さまが私の本の「白内障手術体験レポート」の最後に「早くしないと損しますよ」と書いてくださっているように、若い時間、楽しめる時間を損します。やっぱり手術は怖いので、先延ばしにされる方が多い。
 しかし、年だからとそのままにしておくと、視力がどんどん落ちて脳の刺激がなくなり、うつ病や痴呆症になってしまう。そうなると周りも大変になるし、手術自体も大変になってしまう。良いことは何もありません。もし、「白内障で視力が落ちている」という診断を受けたのであれば、早めに手術することによって、それからの人生が視力に関しては、とても見やすく良い状態で楽しめます。

多根 手術をすることで長生きしても夢が持てる時代になったわけで、本当にありがたいですね


眼科医になろうと思ったきっかけ

赤星 私は小学生の頃、よく結膜炎になっていました。眼科での治療のために神奈川県横須賀市にある日本伝道会の衣笠病院に毎日通院していました。たまたま待合にいたときに、古谷知恵子先生が患者さんの包帯を取っているのを見ました。眼の辺りを拭いてあげて「どうですか?」と先生が聞くと患者さんは「あー、先生。見えます」って言って、泣き出したんです。それを見て、これは凄いことだと思いました。

多根 小学生の子どもがそのように思ったのですね。

赤星 思ったのです。何も知らないですから、どんな病気でも一生懸命やれば治ると思っていました。医学部に行って勉強すればするほど、そんなに簡単ではないということがわかりました。そこで、基礎の研究をしたら良いだろうと思い、大学1年生から基礎の解剖学研究室に入りびたりで、大学5年生の時に、イギリスのブライトンでの国際学会で研究発表をするぐらい、多くのことを実験しました。
 そのまま大学に残って基礎研究を続けて欲しいと随分引き止められたんですけど、奨学金をもらっていたので、卒業後、神奈川に戻らざるを得なかった。ただ眼科をやりたい一心で、銀行からお金を借りて一括返済して、眼科だけのキャリアを始めました。そして、勉強するのであれば、ナンバーワンのところでやりたいということで、東大病院の眼科に入局させてもらいました。
 基礎研究で病気のメカニズムを解明するのは魅力的だけれど、実際の治療が実現するには時間がかかり過ぎる。今できることで失明から患者さんを救いたい。そこで手術によって治療可能な白内障治療の最高峰を目指すことにしました。赴任当時年間300件程度だった三井記念病院の手術を7千200件にまで増やし、日本一の病院にしました。三井を辞めた後は、日本橋白内障クリニックを日本一の手術の殿堂とするつもりでいます。

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アマゾン奥地のアイキャンプでの視力検査(2018年6月)


67ヵ国で講演や公開手術

赤星 日本橋クリニックができる前は、お父さまと3年がかりでディスカッションを重ねたんですよ。新しいレンズを作るなどいろんなことを考えましたが、むしろ理想的な治療をできる場所を作って、そこが軌道に乗ったら人材を養成しようと思いました。私ができる手術は年間1万件ぐらいしかない。もっと広げるためには、同じ手術ができる技術を持った人を育成して、その人がまた別のところでクリニックを開くということを繰り返す。それが広がったら、世界中のレベルアップになるのではないか。世界的に見て、いまだに失明原因のナンバーワンは白内障です。毎年3千万人以上が白内障で失明している。白内障は眼のレンズを取り替えれば、見えるようになるのです。
 いままで、67ヵ国のさまざまな国で講演や公開手術をしてきました。私と同じ手術ができる人を育てようと思ってやっています。

多根 「神の手」を持たれる先生の後継者はいらっしゃるのですか?

赤星 残念ながら日本には信頼できる後継者はいません。しかし手術だけなら、同じことをロボットがするようになるはずです。10年もしないうちに間違いなく実現します。しかしロボットは白内障は治せても、人の心の目を開くことはできません。
 私の原点は古谷先生が手術をされて患者さんが喜ばれたという、小学生の時に見たことです。人間である医者と患者さんとの繋がりが一番大切だと思っています。

多根 「手術中に先生が声を掛けてくださって、すごく安心できた」とか、「終わったあと
も声を掛けてくださった」と仰っているのを聞きます。そういうことは、ロボットではできない部分ですよね。

赤星 そうですね。最高の手術をするには、最高の技術をもったスタッフが手術室の中では必要です。一方、手術室の外には、緊張している患者さんがいたら緊張を和ませてあげるような、技術的な知識は少なくても、患者さんを思いやる心がある看護師が必要だと思っています。

多根 父も手術したあと、看護師さんが手を引いてくださったのが、凄く安心で頼りになったと言っていました。

赤星 患者さんは、ものすごく怖いんですよ。手術なんかしたことない人が、いきなり眼にメスを入れるのです。

多根 術中にも意識がありますからね。

赤星 パリミキの社員で、メガネの基礎知識があって、なおかつ人間として温かい心を持った人が来てくれるとすごく良いです。「色々なジョイントをやりましょう」と、三井記念病院を辞めた後にたくさんお話をいただいたんですが、私が理想としているものは、それではないと思いました。私は、日本橋クリニックをこれからも大切にしていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。


白内障か迷ったら

多根 最後に白内障かどうか不安がられている方や、白内障と診断されて手術を迷っておられる方へメッセージをお願いします。

赤星 今までは、視力が悪くなるとメガネで解決していたと思うのですが、パリミキで作るメガネは最高のものです。最高の視力測定で、最高のレンズを使って思うような視力が出ないとすると、それは、メガネが悪いのではなくて眼が悪くなっている可能性がある。それは、簡単な診察でわかることなので、遠慮しないで眼科で受診してください。それで、別の病気が見つかる場合もありますし、白内障であれば今は、非常に簡単な手術で済みます。日本橋クリニックでは、この5年間で1万5千154人。年間3千件のペースで手術をしています。

多根 今日は本当にありがとうございました。


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日本橋白内障クリニックの手術室


<赤星 隆幸> あかほし・たかゆき

1957年、神奈川県生まれ。
自治医科大学卒業後、東京大学医学部附属病院、東京女子医科大学糖尿病センターなどを経て1991年から2017年まで三井記念病院で勤務。
1992年、白内障手術の画期的な手術法「 フェイコ•プレチョップ法」を発表。
現在、世界67ヵ国で年間約1万件の白内障手術を行う。
2017年、ケルマン賞(白内障の治療で国際的に貢献した眼科医を顕彰)受賞。
著書に『最新版・白内障のひみつ』(朝日出版社)などがある。趣味はカメラ。


医療法人社団幸星会 日本橋白内障クリニック

〒103-0022 東京都中央区日本橋室町2丁目4-1
浮世小路千疋屋ビル(YUITO ANNEX)3F
TEL/03-5542-1446 FAX/03-5542-1447
http://www.nihonbashi-hakunaisho.com