米中間の摩擦の現状と米国内での声

米中間の摩擦の現状と米国内での声


米中の覇権争い

アメリカと中国はお互いに報復関税を課すと発表するなど、今年になって米中間の貿易そして政治的摩擦は激しさを増しています。特に近年、経済的にも軍事的にも急速に台頭してきた中国への敵がい心はすさまじいものと感じます。世界の中での超大国アメリカの覇権を脅かす国は見逃すわけにはいかないといったスタンスだと思います。つまり、中国をアメリカの覇権に挑戦する最大の脅威とみなしたわけです。旧ソ連と対峙していた冷戦時代には自由貿易や民主主義を唱えて、平和を目指すリーダーシップを取っていた米国が、現政権になって真逆の姿勢でTPPやパリ協定離脱で内向きに転じはじめました。

それを好機と見た中国が米国に代わって、彼らが唱える「一帯一路」という国際協調の旗を振って世界にアピールしています。もちろん、そのルートの近隣諸国にとっては、明らかに中国が仕掛ける「債務の罠」であることは間違いなく、中国の覇権拡大の野心が見え隠れしていると米国民は見破っています。そのような「一帯一路」という中国式世界制覇(中華圏の覇権成就)に翻弄され追従せざるを得ない欧州や各国の弱腰姿勢に、トランプ大統領は我慢ならないのです。

今回の米中貿易論争においてトランプ大統領がよく口にする「米国にとって最高のDEALを勝ち取ることが肝心」ですが、果たして今回の中国との報復関税合戦は米国に有利に機能し、国益を守ることができるのでしょうか?

 もっとも過去の歴代大統領も米国第一主義だったことは明白です。1983年には当時のレーガン大統領が、700㏄以上のオートバイに45%課税したことで、米二輪車メーカーのハーレーDavidson社を破綻から救ったとして評価されています。2009年には、当時のオバマ大統領が、中国製タイヤをターゲットに35%課税しました。この時のオバマ大統領の課税処置は失策として有名で、課税のしわ寄せはすべてのタイヤの大幅値上げにより米国内の消費者に、そして間接的に小売業界の雇用減少を生んだといわれています。


一極支配から協調へ

米中の貿易摩擦のエスカレートは、両国に何の利益ももたらさないばかりか、政治的軍事的衝突の危険をも含んでいます。また、周りを見渡せば、米中間だけではありません。最近の日韓の歴史問題や米中と同じような日韓貿易摩擦、その隙に漁夫の利を得ようとする北朝鮮のミサイル発射による挑発や先日の中ロの軍事合同演習と、どうしても、きな臭さを感じます。

環太平洋地域の平和は米中そしてロシアの力の均衡で保たれていますが、その均衡が中国によって崩されることを、ほとんどのアメリカ人はとても心配しています。米国が主導してきた世界秩序(米国の正義)ですが、それが中国の世界秩序(中華思想)の中心的役割たらんとして推し進める一帯一路にとって代わることに、彼らは警戒心を募らせているのです。

そのような中、アメリカの大半の知識層はトランプ大統領の権力を使った難癖を、何より恥ずかしくそして怖いと感じています。彼らはトランプ氏の米国本土にとって、脅威とみなされない北朝鮮の昨今の小型ミサイル発射には許容範囲とみなし、少しでも米国の利益や自分のプライドに反することには、たとえ同盟国にでも牙をむく近視的で単純かつ粗暴な言動に戸惑っています。その影響が長期的に見て米国の衰退、そして太平洋のパワーの空白を好む中国を利するのではと心配しています。

トランプ政権がTPPやパリ協定を離脱し内向きに転じ、WTOまでも離脱をほのめかしていますが、トランプ大統領自体が米一国で決められる時代(一極支配)は瓦解したことに気づいていないことが情けない次第です。経済面の利害の対立が、軍事衝突に発展してきたことは過去の歴史が物語っています。大国同士が角を突き合わせて対立を深めても、誰にも利するものはありません。米中、日韓、それぞれの国益を背負ったすべての国の当事者同士が「お互いの共通利益を得るには何が必要か」を話し合うべきなのではないでしょうか。


パリミキ アメリカ シアトル 曽我部光由
241sogabe.jpg