トランプ・ショック

新政権誕生

 世界が「トランプ・ショック」に揺れています。ドナルド・トランプ新大統領は、政治や世界外交の経験がないだけでなく、型破りで不規則な発言で知られています。そして、新大統領に就任し、次々と公約通りの政策を実行に移しています。トランプ大統領の出現は、歴史を血なまぐさい紛争の世に引き戻すことになるのか、はたまたアメリカを真の強国に導き、真の平和と共存の世界に導くのかは予測できません。
 ただ一つだけ言えることは、こういった「アメリカ第一主義、排他排外政策」に国民感情を傾けさせ、トランプ氏の神輿を担がせるきっかけを作ったオバマ前大統領やクリントン氏を含む民主党の失策だらけ政権にも、大きな責任があると感じています。

 2016年11月の選挙結果は「どちらの候補も嫌いだけれど、平気でウソをつき国民をだます腹黒いヒラリーよりも、暴言は平気で吐く素行のよろしくない成金男だが、米国民の生活を守るために立ち上がった粗暴で自分自身に正直な分かりやすいトランプ氏に賭けてみよう」という国民感情が強かった結果ではないでしょうか。つまり「ヒラリーよりトランプのほうがまし」というアメリカ国民の声の、選挙結果だったのです。

オバマ ケア

 8年間のオバマ政権は、中途半端な中東への介入による不透明な世界秩序の到来や、修飾された言葉で人々を魅了し感動させる演説上手なだけで、実態は国民を落胆させるばかりでした。オバマ前大統領はキレイ事を多く言いますが、その大半が実現できていません。
 例えば、広島訪問時の核廃絶演説に、メディアは拍手喝采でした。しかし、彼はその裏で、30年間で1兆ドルかけて、核兵器をより殺傷力を持たせて近代化にする政策を承認しました。内政ではオバマ政権を支援するロビー活動が活発な大手製薬会社や医療保険企業を潤すだけに終わったオバマケア。

 一般の真面目な労働者の医療保険料を倍増させ、労使ともに生存権を脅かす結果となり、内外で不評に終わったオバマケア政策などの失策に国民中間層がへきえき辟易したことも事実です。もちろん前任のブッシュ共和党政権(外向きは世界のポリスマン、内向きは自由競争にゆだねる小さい政府を目指す)からの覇権主義による外交失策と、内政での製造業を他国に奪われ疲弊した国民生活から目を背ける過去の共和党方向性への怒りも冷めていないでしょう。だからこそ、共和党内からも異端児と見られているトランプ氏が注目されました。


アメリカファースト

 私がまるでトランプ政権を歓迎していると誤解されるかもしれませんが、本音は「もう少しよき指導者がこの広い米国内にどうしていないのか?なぜヒラリーとトランプという最悪の選択肢になってしまったのか?」と落胆しています。

 ともあれ決まった以上は、米国民が新リーダーを米国だけでなく世界の平和のためによき方向に導いてくれるよう監視しなければいけません。よく考えてみれば、トランプ新大統領の掲げる「アメリカファースト」は、歴代すべての大統領が目指してきたスローガンであり政策だったはずです。どの国のリーダーも自国の国益を第一にします。世界への覇権主義的進出は、グローバル化の名の下に、そこにアメリカの国益に利するゆえの政策だったはずです。
 それなのに歴代政権は、ずさんなアメリカの国境管理問題や不法移民問題、イスラム過激派によるテロといった国内最大の関心事に明確な対策を打ち出せていませんでした。

移民問題

 日本の皆さまは「国を追われた難民がかわいそう」と思われるかもしれません。それは日本が海に囲まれていて、米国のような陸続きの国境問題が存在しないために、実感が難しいのではないでしょうか。実は、日本の入国管理局の取り締まりの厳しさは世界でもトップクラスで、不法入国者も20数万人に抑えられています。しかし米国では、メキシコ国境からの不法労働者が1000万人を超えており、社会問題化して久しいです。「移民の国」米国では合法移民枠で、毎年70万人ほど移民していますが、非合法移民数はそれを上回っているかもしれません。

 難民や移民に寛大な国に住んでみなければわからない葛藤というものがあります。皆さんも、日本政府が難民をたくさん受け入れ、移民大歓迎の政策を実行した日本の社会生活を想像してみてください。
 もちろん、生活習慣こそ異なりますが、良き隣人になる不法移民の人も多くいらっしゃいます。ただ、文化風習の違いで衝突が生じることが多々あります。大量生産の先駆者だったアメリカが、30数年前に自動車産業で日本に追い抜かれています。近年ではほとんどの製造業が中国に奪われてしまい、米国に古き良き時代の製造主要都市が、さび付いたゴーストタウン化しています。
 それでも忍耐強く長年移民に寛容だった米国。しかし「近年の国内でのテロ事件や生活環境悪化に社会の不平不満が爆発した選挙結果だったのでは」と感じています。

 これからのアメリカ

 最近では、大統領令での入国規制によりシアトル国際空港は騒然としている模様です。合法ビザ所持者や永住権所持者の入国にも影響が出ています。多くの外国人技術者を雇用する企業にとっては死活問題です。この騒動で司法長官が今回の大統領令は「違憲」と非難声明を出し、早くも司法府と大統領府との衝突が生じています。

 トランプ大統領の他者を思いやる寛容度が少ない過激発言には、私も不快に感じる時があり「この世の中どうなっちゃうの?」と不安に駆られます。それでも決まった以上は明るい未来を信じたいものです。成り上がりの商売人であり、大衆迎合がはなはだしく俗っぽいトランプ大統領。政治や外交経験がゼロゆえに内向き政権、内需優先。いままで北朝鮮の核実験や、中国の南沙諸島埋め立てなどの行為に「遺憾である」との声明しかできなく弱腰姿勢だったオバマ政権ではないのです。

 トランプ大統領の中に「真の世界平和を目指すには、まずは自国の国民、産業を栄えさせ足元を盤石にし、力を蓄える」という一国のリーダーとして至極もっともな大志があると私は信じたいです。



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パリミキ シアトル支配人
曽我部光由