まさかのイギリスのEU離脱

離脱の要因

 2016年6月23日(木)EU離脱が決定した。国民投票の大きさを目の前で見ることになった。大きな要因として移民問題もあるのだが、それ以上に離脱すればEUに払っている週あたり3億5000万ポンド(約552億6500万円・6月23日当時)の予算が浮く。これをNHS(国民保健サービス)に回せるというのはまさに、各種の政治運動が夢見る主張だ。印象的で分かりやすく、多くの世代の政治指向の有権者を惹き付けた。現に、NHSのシステムで医療費は無料であり、私の娘も無料で予防接種などを受けている。離脱派がこれを、広報バスに大きく掲げたのも当然だろう。
 詳しく精査すれば、そのようなことはありえないのだが、それでもメッセージは力を失わなかった。3億5000万ポンドという額の根拠に使われた数字に、財務省特別委員会が異論を唱え、英統計局がミスリーディングな数字かもしれないと指摘したにもかかわらず国民の票は変わりなかった。

人々の心

 年齢が高いほど、投票する傾向も高いのは確かに事実だ。2015年総選挙では65歳以上の投票率が78%だったのに対して、18~24歳は43%、25~34歳は54%だった。しかもインド、パキスタンなど(コロニーだった地域)の移民の票は70%が離脱派に投票されており、移民にもかかわらず移民の受け入れを拒否するような形となった。投票した本人たちは確実に英国人としての誇りをもっているように思える。
 1番衝撃なことは選挙翌日のGoogleでの検索ワード1位が「What is EU?」というもの。選挙の後に調べている人が多いことが伺える。
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 上の図は赤が離脱、青が残留だが、有名学校がある地域(ケンブリッジやオックスフォード)や企業が多い地域では残留希望が多く、高齢者、労働階級者が多い地域は離脱というエリアごとの特色を多く含んでいる。

外から見たイギリス

 今後、アメリカからみてもEUとの交渉の際に、いいパートナーだった英国(言葉が英語なため)がいなくなる。EUの中には英語という言語がなくなり、スコットランドなどの主張する「EUに残るためにUKにとどまった」ということも含め、ユナイテッドキングダム自体の存在が脅かされるようになった。
 軍事施設も現在、スコットランドに集中しており、今回の件でスコットランド独立の動きが強まると、イングランド(もしくはロンドン)は軍事施設を持たないことになる。
 結果とても小さな国になるという懸念が、ロンドンでは大きく取り上げられている。また、イギリスにある日本企業も銀行、商社、貿易などの企業が80%以上占めており、アイルランドのダブリンや、ドイツのフランクフルトなどへ移動の可能性が高い。

新しい首相

 現在はドイツ、フランスなどとの交渉をスタートしているが、さまざまな決め事を作っていかなければならない状況である。離脱を引っ張ってきた二人が辞任したため、テリーザ・メイ首相が誕生した。国会中継などを見ていると非常に発言も力強く、第2のサッチャーと呼ぶ声もあるくらいだ。ファッションでも注目されており、奇抜なシューズなどでイギリスを沸かせている。
 デービッド・キャメロン元英首相時代に造ると公言していた、原子力発電所(中国製)を安全の確認が取れるまで造らないと答え、今後の核兵器の使用の有無について聞かれると「YES」と答えるなど、普通は抑止力などのためなど前置きを置くところを、彼女はダイレクトに答えている。まさに、サッチャーのような力強さを感じる。
 未だ、どういう状態になるか分からないイギリス。今後の状況も目が離せない。

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筆者:パリミキ ロンドン法人 支配人 西垣 勇太
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