イギリスにおける医療事情

パリミキ ロンドン法人 河野亮二

 イギリスで生活をしていると、「フェア」だ、「アンフェア」だという言葉を聞く機会によく遭遇します。
医療に関してもこの「フェア」であることということが重視され、1948年に「支払い能力に基づくのではなく、医療の必要性に応じてサービスを受けることができる」を基本理念に国営医療制度(NHS)が発足しました。
 スローガンは皆さんも耳にした事があると思う「ゆりかごから墓場まで」で、基本的に受診料、手術、入院費等一切無料です。ただ、処方箋が必要な医薬品は有料で、塗り薬、飲み薬共に一律7.2ポンド950円だけはかかります。
 これはイギリス国民でなくてもビザを持った外国人も受けられるという太っ腹なサービスですが、かなり以前から様々な問題が指摘されているのも事実です。

 イギリスでこの医療サービスを受けるにはまず「GP」と呼ばれる近所の「ホームドクター」に登録しておく必要があります。
 日本では熱があり病院へ行く場合は病院へ行き、その日のうちに診察も終わりますが、イギリスでは風邪であろうが、怪我であろうが、とにかくこのGPで診てもらえないと専門医へかかることもできません。A&Eと呼ばれる救急は別ですが、命に関わらないと判断され、4-5時間待ちというのは当たり前です。
 風邪で診てもらう場合も予約が必要で、運よく数日後に予約が取れた時には風邪が治っていたなんて事もしょっちゅうあるそうです。

 GPが全ての病気、怪我の窓口になっている為、GPはなんでも出来る優秀な医者ということになっていますが、実際はあまり人気がなく医師の質も地域によってばらつきがあるようです。また、患者はGPが紹介した専門医以外へ行くことが出来ない為、住むエリアが大切になってくるという話もよく聞きます。

 NHSの医療費高騰が財政を圧迫するとして、GPには簡素な診察、NHS病院にもコスト削減が推奨されていて、入院などはめったなことではできないようになっています。NHS病院は空きベッドがある程度なければ罰則もあるそうで、入院させないよう一生懸命で本末転倒のようにも思います。

 ちなみに専門医の診療や手術を何カ月も不安な思いで過ごすのが嫌な人は、100%自己負担のプライベート病院へかかることになりますが、プライベートだから「腕」が良いとは限らない危うさもあります。

 このようなことから、イギリスではドラッグストアが乱立していて、時間がかかるGP→専門医へかかるよりも、今までの経験から市販薬を飲み「自分で直す」、あるいは病気にならないように気を付けるといったように、ある意味医療に頼らない生活をしている人が多くいます。

 NHSは大企業病、お役所的で様々な問題はありますが、世界に誇れるサービスであることは間違いないので、「フェア」の精神でこれからに期待したいものであります。

ロンドン_1.jpg