英国における震災の報道

ロンドン 河野 亮二

 3月11日震災当日。ロンドン店のスタッフは、それぞれ日本に何かしらの繋がりを持っている社員が多いことから皆深刻な顔をして出社。電話が通じないので、後でメール連絡で無事を聞くまで仕事が手に付かないほど心配していた。開店後接客するほとんど全員のお客様から「家族や知り合いはいませんでしたか?」「大変なことになって、心配しています」とのお声を掛けて頂いた。ロンドン店ではその日のうちに義捐金ボックスを作り店頭に設置、イギリス人、観光で来られている方、本当に多くの方から驚くほどの金額を頂き、慈善の精神を痛感した次第だ。また、パリミキロンドンがスポンサーになり、「がんばれ東北」と書かれたチャリティエコバッグを制作、1枚5ポンドで販売し、全額寄付に回している。

 英国の各メディアは、震災直後から日本国内より衝撃的な画像、動画を流していた。
 海外にいると良く感じるのは日本の報道の偏りであり、この時も日英両国のメディアを見、情報収集するよう努めた。報道は当初より日本に同情的であり、日本国民の回復力を1995年の阪神淡路大震災の例を出し「がんばれ日本」と応援してくれるものが目立ったように思う。

3月14日付け「タイムズ」紙

日本政府の迅速な災害対応
 未曾有の惨事に見舞われた日本の苦悩から、陳腐な教訓を引き出すことはできない。私たちのするべきことは、人道援助の手を差し伸べる準備を整え、日本国民の回復と当局の対応の迅速さを尊敬の目で見つめることだけだ。
(中文省略)
 日本国民は政治的決断力を求めている。それは同盟諸国からの援助を有効活用するうえでも欠かせない。日本は今、大変な苦難の中にあり、政治家たちは逆境の中に立っている。しかし、彼らが見せる決断力と人間性は、今後同盟諸国の行動を促していくだろう。

だが、3月17日以降は原発事故を多く扱うようになり、

「ガーディアン」紙
 巨大地震から1週間、日本は行方不明者の捜索に加え、原子力発電所の危機、燃料の枯渇、膨大な数の避難民、水道、電気の不通など折り重なる危機と苦闘している。福島第1原子力発電所とその周辺では放射線レベルが上昇、放水車やヘリコプターによるその場しのぎの冷却作業も効果はないようだ。半径20キロ以内の住民は避難しているが、米国とカナダは半径80キロ以内の自国民に避難勧告をだした。今後は被災地への救援物資の配達の滞りが出てくるだろう。主要な幹線道路沿いにガイガーカウンターを設置する必要があるだろう。

 菅首相は阪神淡路大震災の教訓に学び、当初は迅速に対応したが、その後は官房長官に会見を任せ、影を潜めている。国民は今、安心感と信用できる情報の即時提供を求めているが、いずれも得られていない。中でも最悪なのは東京電力だ。同発電所において最も危険なウランがあるのは炉心ではなく、1万1195本もの使用済み燃料棒の中だ。なぜそれほど多くの燃料棒が発電所内に保存されているのかと言えば、そのほうが廃棄するよりも安上がりだからである。同じことは米国でも行われている。原子力産業に核廃棄物を安全に処理する能力のないことが再び問題になりつつある。

同日「イブニング・スタンダード」紙
 日本の原発危機が第2のチェルノブイリになるのは時間の問題かもしれない。米原子力規制委員会は日本政府は事故の深刻さを十分に認識しておらず、国民への警告も控えめすぎるとの見解を示した。控えめな表現は日本人の性質だが、「再臨界の可能性もゼロではない」という東京電力の警告の仕方は、控えめというよりむしろ誤魔化しだ。これを言いかえれば再臨界の可能性があるということになる。混乱を招くのを懸念してのことだとしても、日本国民や国際社会はわかっている事実を明確に知らされるべきだ。経済力と技術力を持つ日本でこのようなことが起きるなら、発展途上国における原子力の今後の安全性は一層懸念される。

 と原発事故に対する懸念が大きく取り上げられることになった。
 イギリス人は英語を話すことからアメリカ人とかと良く同じ様な性格だと日本からは思われているかもしれないが、考え方、人との接しかた等、自己をあまり主張しない、周りの目を気にする、愛想笑いをする、お世辞を言う等かなり日本人に近い国民性と言える。そのことからもイギリス人から原発事故のことが話題に上ることはあっても突っ込んだ話にはならないので、本当はどのように感じているのかは分からなかった。
 最後に各雑誌の表題、社説の1文を見てもらいたい。
 まず各紙日本語で、「がんばれ日本。頑張れ東北」「根性」「日本、みなさんは1人じゃない」
後は英語で、「被害の甚大さにも関わらず、日本から見えてくるものは絶望ではなく、驚異的な平静さである」「津波を受けた日本の人々より、原発問題に関心を寄せる諸外国のほうがヒステリックな反応を示している」「日本人の本災害における反応に対して世界から尊敬の目が向けられることで、日本はこれまで最も必要としていた自信を回復されるかもしれない」 (週刊ジャーニーより抜粋)


ロンドン_1.jpg
ロンドン 河野 亮二